散歩中に他の犬へ吠える犬のトレーニング|行動の理由から考える取り組み方

吠えトレーニング

「散歩中に他の犬へ吠える」といっても、吠える理由はさまざまです。

他の犬と遊びたくて吠える犬もいますし、近づきたいのにリードで止められて吠える犬もいます。相手犬に対して興奮が高まり、つい声が漏れてしまうという子もいるでしょう。

この記事では、そういった吠えの中で、相手犬に対して警戒し距離を取りたい気持ちが関わっている吠え。いわゆる「警戒吠え」と呼ばれる吠えについて書いていきます。

これまでにも、この警戒吠えについて取り上げた記事を公開しています。まずそれらから読んでいただくと理解しやすいと思いますので、ぜひご覧ください。

まずは、散歩中に他の犬へ吠える行動がどのように悪化しやすいのかを知りたい方はこちらをご覧ください。
→ 散歩中に他の犬に吠える|吠える行動を理解して悪化を防ごう

次に、実際のお散歩で他の犬を避ける理由や、避ける散歩の組み立て方を知りたい方はこちらをご覧ください。
→ 散歩中に他の犬に吠える|まずしてほしいこと、すぐにできること

散歩中に他の犬に吠える|吠える前に見られる前兆行動とは

今回は、さらに進んでこの警戒吠えへのトレーニングに関わる内容を書いていきます。

代わりの行動を教えるという考え方

この警戒吠えは、一般的に「怖いから吠える」「警戒しているから吠える」というように説明されます。

ただ、行動の理解としてそこで話が終わってしまうと、「怖がっているので安心させてあげましょう」「警戒しているので無理をさせないようにしましょう」といった、少しふんわりしたアドバイスで終わってしまうかもしれません。

実際のトレーニングとして組み立てていくなら、もう少し具体的に考えていきたいですね。

この警戒吠えは、多くの場合「相手と距離を取ること」を目的に行われています。

実際に、吠えた結果、相手が離れていったり見えなくなったりすることで、「吠えたら追い払えた」という成功経験となり、その経験を繰り返すことでこの警戒吠えは強化されていきます。

犬は相手と距離を取るために吠えているということ。

でも、もしもそこで別の解決策を教えることができれば、状況は変わってきますよね。

吠えなくても相手と距離を取ることができるということ。

たとえば、

愛犬が相手の犬を見たとき、吠えていない段階で、進路を変えて移動する。その結果、相手犬は見えなくなる。

こういった流れを作っていきます。

問題行動と同じ機能を持つ「代わりの行動」を教え、その結果として問題となる行動の減少につなげていく手続きを、専門的に「代替行動分化強化」と呼びます。

吠えて距離を取るのではなく、飼い主と一緒に離れることで距離を取る。

つまり、これまで吠えることで相手犬との距離を取っていた犬に、「自分の方から離れる」という新しい選択肢が出てくるということですね。

最初は飼い主が動きをサポートする

もちろん、最初から愛犬が自分でスッと離れられるわけではありません。

他の犬を見つけた瞬間に体が固まる犬もいます。相手犬をじっと見つめてそこから動けなくなる犬もいます。リードが張って前のめりになる犬もいます。

そのような状態で「自分で離れる」ということを求めても、なかなか難しいのですね。

だから、はじめは飼い主が分かりやすく移動をサポートします。

たとえば、リードをゆっくりと引いて移動を促します。人間の子どもの手を引くように、リードを短めに持ち、優しくゆっくりと、でもしっかりとリードを引いて進路を変える。

無理にグイッと引っ張るのではなく、「こっちにおいで」と移動を助けるようなイメージです。

このとき大切なのは、犬が吠え始めてから慌てて引っ張るのではなく、吠える前に動き始めること。

愛犬が相手犬に気づいたとき、相手犬をじっと凝視している。まだ吠えてはいないけれど、体が硬くなり、このままだと吠えてしまいそうな場面です。

その段階で、飼い主さんが先に進路を変えます。

そして、愛犬が飼い主について移動してくれたら、移動したその先でしっかり褒めます。

ここで褒めているのは、飼い主の動きについてきたこと、相手犬から離れる方向へ一緒に移動できたことを褒めています。

この流れを繰り返し経験していくと、愛犬はよりスムーズに飼い主について来てくれるようになっていきます。その結果として、距離を取る対応がしやすくもなっていきます。

また、普段からオイデの練習をしておくことも役に立ちます。

他の犬を見つけたときに、名前を呼んで飼い主の方へ動くきっかけを作るのもいいでしょう。

ただし、目的はオイデそのものではありません。

目的は、他の犬を見たときに、吠える前に飼い主と一緒に安全な距離を取る流れを作ることです。

最初は、飼い主がリードを引いて移動を促さなければいけないかもしれません。

飼い主が「オイデ」と呼ばないと、愛犬が動き出せないこともあるでしょう。

それでも構いません。

はじめは飼い主が分かりやすくサポートしながら、相手犬を見たときに、吠える前に距離を取る流れを作っていきます。

ここまでだと、飼い主に促されて相手犬と距離を取るという形になっているので、今後は愛犬自身が自分から移動して相手犬との距離を取れるようになることを目指していきます。

吠える前に移動することで吠えは減っていく

大切なのは、吠えてから距離を取るのではなく、吠える前に距離を取ること

この流れを繰り返すことで、愛犬にどんな行動の変化が出てくるか見ていきましょう。

まず、愛犬は相手犬を眺められる時間が伸びていきます。

今までは他の犬を見た瞬間にすぐ吠えていたのが、吠えずにじっと眺められる時間が伸びていくんです。

これは大きな変化です。

相手犬を眺められる時間が伸びてくると、その分、飼い主さんが対応に入る時間にも余裕が生まれます。

これは、愛犬だけでなく、飼い主さんにとっても慌てなくて済む時間が少しずつ増えていくということです。

さらに取り組みが進むと、愛犬は相手犬から視線を外せるようになっていきます。

相手犬が視界に入っても、視線を別に移しお散歩を継続できるようになっていくのですね。

相手犬を見たあと、飼い主の方に視線を向ける。

相手犬を見たあと、視線を地面に移しニオイ嗅ぎを継続する。

そういった行動の変化も見られるようになっていきます。

他の犬が苦手な犬は、相手犬から目が離せない状態に陥っています。

相手犬を見張っていないと不安で、視線を外すことができない状態なのでしょう。

そのため相手犬から視線を外せるようになるというのは、それだけ相手犬に対して平気になってきた、見張る必要性を感じなくなってきた、つまり「慣れてきた」と評価することもできるのではないでしょうか。

また、愛犬が相手犬を落ち着いて眺められる時間が伸びてくると、他にも望ましい変化を期待できるかもしれません。

愛犬が相手犬を落ち着いて眺められるようになるにつれ、愛犬自身が相手との相性を見る余裕も少しずつ出てくる可能性があります。

他の犬と仲良く遊べるようになってほしいと考える飼い主さんは多いと思います。

ただ、他の犬を見ると激しく吠えてしまう愛犬は、大騒ぎしているためその相性を見る余裕もないわけですね。

だから、まずは相手犬を落ち着いて見られるようになること。

他の犬との交流を考えるのはその先のステップとして見ておくとよいでしょう。

相手を眺められる時間が伸びてくる分、飼い主にも余裕が出てくる。

愛犬が相手犬から楽に視線を外せるようになる分、お散歩をスムーズに継続できる。

愛犬が相手との相性を見ることができるようになると、今後接近できるようにもなっていく。

こういった変化によってお散歩中の吠えは減っていき、快適なお散歩に繋がっていくのですね。

「避けていたら慣れないのでは?」という疑問について

他の犬を避けていたら、いつまでも慣れないのではないか。

そう心配になる飼い主さんもいらっしゃると思います。

実際に、他の犬を避けているつもりなのに、なかなか吠えが減らないと感じている方もいらっしゃるでしょう。

ただ、その場合に考えたいのは、「避けること自体が悪い」ということではありません。

避けているつもりでも、愛犬にとってはまだ吠えやすい流れになっていることがあります。

ここでは、考えられる要因をいくつか分けて見ていきます。

・吠えてから避ける流れになっている

まず考えたいのは、愛犬が吠えてから避ける動きに入っていないかということです。

これまでお話しているように、「吠えたら距離が取れた」「吠えたら追い払えた」という経験になっていると、慣れるよりも吠える行動の方が優先的に維持されてしまいます。

・避ける距離が、犬にとってはまだ近すぎる

飼い主としては「かなり離れている」と感じていても、愛犬にとってはまだ近すぎることがあります。

愛犬の警戒行動が激しく出ている場合、愛犬の中ではかなり強い刺激を受けている状態になります。

大切なのは、人間目線の距離ではなく、愛犬が吠えずにいられる距離を基準にすることです。

・散歩全体で他犬に遭遇する回数が多すぎる

一回一回の距離は取れていても、散歩中に何頭も犬を見ると、愛犬にとっては負担が大きくなることがあります。

最初の一頭には吠えずにいられても、二頭目、三頭目と続くうちに、警戒心や興奮が高まりやすくなります。

警戒心が関わる行動は、たくさん見せれば慣れるという単純なものではありません。

避けているつもりでも、散歩全体で他犬に遭遇する回数が多すぎると、結果として吠えやすい状態が続いてしまうことがあります。

だから、他の犬を避ける散歩を考えるときは、一つ一つの場面だけでなく、お散歩全体でどれくらい他犬を見ているかも大切になります。

避けること自体が悪いわけではありません。

「避けていたら慣れない」のではなく、避け方やタイミング、距離、遭遇回数によって、愛犬にとっての経験が変わっているということなのですね。

トレーニングとして意気込まないでください

ここで気をつけてほしいのは、トレーニングとして意気込みすぎないということです。

「他の犬に慣れてほしい」「吠えずにやり過ごせるようになってほしい」と思うと、つい他の犬がいる場所へ行ったり、積極的に他の犬を見せようとしてしまうかもしれません。

でも、

警戒心が関わる行動は、たくさん練習すればするほど慣れる、というものではありません。

たとえ小さな刺激でも、短い時間に何度も触れ続けることで、かえって反応が強まり失敗につながることもあります。

だから、日常のお散歩の中で、遠くの犬を2頭か3頭、落ち着いて見られた。それくらいが練習としては十分だと考えてよいと思います。

お散歩は毎日行くものです。1回の散歩でたくさん練習しようとするよりも、愛犬が無理なく終えられる場面を積み重ねていく方が現実的なのですね。

基本的には他の犬を避ける動きを中心にしたお散歩スタイルで、その中で少しずつ取り組んでいくという感じに考えてください。

この取り組みは、あくまで日常のお散歩の中の一場面として捉えてもらうと良いと思います。

また、愛犬を他の犬に慣れさせようとして、無理に他の犬へ近づけてはいけません。

相手の犬も、他の犬が苦手かもしれないからです。

その場合はお相手さんにご迷惑になってしまいますよね。

もし相手の犬も他の犬が苦手な場合、こちらの避ける動きが、相手の犬にとっても優しい対応になっているということを知っておいてください。

散歩中に他の犬に吠えるという行動は、大変な問題になることがあります。

他の犬を見て吠えるとき、横にいる飼い主の足も噛もうとする子もいます。

遠くの犬にもすぐに吠えてしまう子もいるでしょう。

自宅周辺の環境として取り組むことが難しい場合もあります。

そういった場合は、さらに工夫して考えていく必要があります。

それぞれのケースで、できる事が違ってくるのは当然です。

愛犬の他犬への吠えでお悩みの方は、一人で抱え込まず相談してください。

ぜひいっしょに取り組みましょう。

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