
※この記事は前回までの記事とあわせて読むとより分かりやすくなります。
まずは、散歩中に他の犬へ吠える行動がどのように悪化しやすいのかを知りたい方はこちらをご覧ください。
→ 散歩中に他の犬に吠える|吠える行動を理解して悪化を防ごう
次に、実際のお散歩で他の犬を避ける理由や、避ける散歩の組み立て方を知りたい方はこちらをご覧ください。
→ 散歩中に他の犬に吠える|まずしてほしいこと、すぐにできること
散歩中、前から他の犬が歩いてきた瞬間に、愛犬が急に吠え出してしまう。
そんな経験をされている飼い主さんは多いと思います。
こちらが相手の犬に気づいた時には、もう愛犬は吠え始めている。
名前を呼んでもこちらを見てくれず、リードをおさえてもなかなか落ち着かない。
このような状況になると、飼い主さんもかなり焦りますよね。
前回の記事では、散歩中に他の犬へ吠える行動に対して、まずは「他犬を避ける散歩」を組み立てることが大切だとお話ししました。
吠えた結果として相手の犬が遠ざかったり、見えなくなったりする経験を繰り返すと、犬の中では「吠えたら相手を追い払えた」という学習が起こりやすくなります。
だからこそ、まずは「吠えさせないように散歩を組み立てる」ということが大切になります。
それが、これ以上の吠えの悪化を防ぐことにつながり、今後トレーニングに入りやすくするための土台にもなっていくのですね。
ここからが今回のテーマです。
「吠えさせないように散歩を組み立てる」ためには、できれば愛犬が吠える前に対応に入りたいところです。
吠えてから慌ててリードを引くのではなく、吠える前に距離を取る。吠えてから声をかけるのではなく、吠えそうな流れに入る前に道を変える。
そのために見ておきたいのが、吠える前に見られる愛犬の変化です。
愛犬の様子を見て、「このまま歩くと吠えるかもしれない」「今のうちに距離を取った方がよさそうだ」と判断するための手がかりになるものがあります。
それが、吠える前の前兆行動と呼ばれる反応です。
前兆行動とは、犬がある行動を起こす前に見せる体の変化や反応のことです。
今回の記事では、散歩中に他犬に吠える犬が、吠える前にどのような前兆行動を見せることがあるのかを考えていきます。
愛犬が吠える前に、前兆行動を見せた段階で飼い主さんが対応に入ることができれば、吠えさせない散歩の実現に一歩近づくと思います。
ぜひ参考にしてください。
他犬に吠える前に見られやすい5つの変化
ここからは、散歩中に他の犬へ吠える前に見られやすい変化を具体的に見ていきます。
ただし、前兆行動はひとつのサインだけで判断するものではありません。
大切なのは、普段の散歩中の愛犬と比べて、他の犬に気づいた時の体全体の変化を見ることです。
前兆行動は、ひとつの分かりやすい合図として出るというより、いくつかの変化が複合して見られることもあります。
ここでは、分かりやすい前兆行動を5つ紹介いたします。
相手のいる方向を凝視する
まず分かりやすい変化として、相手のいる方向をじっと見続けることがあります。
みなさん、よく「ロックオンする」と表現されますよね。
相手を見た後、別のものに視線が移ることなく、じっと相手を見続ける。
飼い主が少し視界を遮ろうとしても、覗き込むように必死で相手を見ようとする。
このような状態になると、犬の注意はかなり相手の犬に向いていると考えられます。
もしかすると、愛犬にとっては相手が何をするか分からないから、見張らずにはいられない状態なのかもしれませんね。
まだ吠えていなくても、相手を見続けることで緊張や興奮が高まり、そのまま吠える流れに入りやすくなることがあります。
この段階で気づけると、吠える前に距離を取ったり、道を変えたり、相手が見えにくい位置へ移動したりしやすくなります。
ニオイ嗅ぎが止まる
次に見ておきたいのが、ニオイ嗅ぎが止まることです。
散歩中の犬にとって、ニオイ嗅ぎは自然な探索行動です。
地面のニオイを嗅ぎながら歩いている時、犬は周囲の情報を集めながら散歩をしています。
ところが、他の犬の気配に気づいた瞬間に、急にニオイ嗅ぎが止まることがあります。
さっきまで地面に向いていた顔が上がり、相手のいる方向や音のする方へ注意が向くのですね。
これは、犬の中で注意の対象が変わったということです。
地面のニオイから、相手の犬や周囲の気配へ意識が移った状態と考えると分かりやすいと思います。
ニオイ嗅ぎが止まる変化は、飼い主からも比較的見つけやすい前兆行動のひとつです。
相手犬の方へ突進しようとする
次に見ておきたいのが、相手犬の方へ突進しようとする動きです。
それまで普通に歩いていた犬が、他の犬に気づいた瞬間に歩くスピードを上げ、グイグイとリードを引っ張りながら相手犬の方へ向かおうとすることがあります。
このような動きが見られる時、犬の注意はかなり相手犬に向いていると考えられます。
散歩中に他犬へ吠える犬では、この「突進するように相手に向かっていく動き」と「吠える行動」がつながって見られることも多いですね。
まだ吠えていなくても、相手犬の方へ身体ごと向かっていくような動きが出ているなら、そのまま吠える流れに入りやすい状態かもしれません。
そのため、グイグイとリードを引っ張りながら相手犬の方へ向かおうとする変化に気づいたら、早めに距離を取る、道を変える、視界を切るといった対応に入りたいところです。
身体が硬直する、口を閉じる
身体が硬くなることも、吠える前に見られる変化のひとつです。
ただ、「身体が硬直する」と言われても、実際のお散歩中にそれを見つけるのは少し分かりにくいかもしれません。
その時に見やすい変化のひとつが、口の動きです。
たとえば、それまでハァハァと口を開けて歩いていた犬が、相手の犬を見た瞬間にスッと口を閉じることがあります。
口が閉じると、表情が少しこわばったように見えることもあります。
身体全体の動きも少なくなり、相手の犬の方をじっと見たまま固まるように見えるかもしれません。
相手の犬を見たタイミングで、視線が固定され、口が閉じ、身体の動きが硬くなるような流れがあるなら、犬の緊張が高まっている可能性があります。
そのまま相手の犬との距離が近づいていくと、さらに緊張が高まり、吠えにつながることがあります。
だから、このような変化に気づいた時も、早めに距離を取る、道を変える、視界を切るといった対応に入りたいところです。
呼びかけに反応しなくなる
最後に、呼びかけに反応しにくくなることもあります。
普段なら名前を呼ぶとこちらを見る愛犬が、相手の犬を見つけた時だけ反応しにくくなることがあります。
何度も名前を呼んでも振り向かず、相手の犬を見続ける。
このような状態では、愛犬の注意がかなり相手の犬に向いていると考えられます。
飼い主の声が聞こえていないというより、それ以上に相手の犬の存在が大きくなっているのですね。
呼びかけに反応しなくなってからだと、すでに愛犬は吠える流れにかなり近づいている可能性があるため、対応するのも大変になるかもしれません。
できればその前の、凝視する、ニオイ嗅ぎが止まる、突進しようとする、身体が硬くなるといった段階で気づけると、対応に入りやすくなります。
前兆行動はいつも分かりやすく出るわけではありません
前兆行動は、愛犬が吠える前に見せる反応と書きましたが、実際の話、前兆行動が毎回はっきり分かりやすく見えるとは限りません。
たとえば、相手の犬との距離が近い場合です。
前から歩いてきた犬と急に近い距離で出会ってしまったり、角を曲がった瞬間に犬がいたりすると、愛犬にとってはかなり強い刺激になります。
そのような場面では、相手に気づいた瞬間に緊張が一気に高まり、前兆行動は一瞬で、そのまますぐに吠えてしまうことがあります。
また、相手が大型犬だったり、苦手な犬種だったり、過去に嫌な経験をした犬に似ていたりする場合も同じです。
そのような場面でも、落ち着いて相手を確認する余裕がなくなり、前兆行動を長く見せる前に、すぐ吠えに移ってしまうことがあります。
さらに、前回の記事でお話ししたように、日常の散歩の中で他犬への警戒心に勢いが乗っている場合もあります。
散歩中にずっと周囲を気にしている。些細な物音で顔を上げる。曲がり角や家の前を通るたびに、犬が出てこないか確認するように歩いている。
このような状態では、犬はすでに反応しやすい準備状態に入っています。
そうなると、他の犬を見つけた瞬間に一気に吠えまで進みやすくなるわけですね。
飼い主からすると、「前兆行動なんて見えない」「うちの子は本当にすぐ吠える」と感じることもあると思います。
それは事実です。
前兆行動が見えないように感じるのは、飼い主の観察力が足りないということではありません。
距離が近すぎる、刺激が強すぎる、警戒心がすでに高まっている。そのような条件では、前兆行動がとても短くなり、見つけにくくなることがあるのですね。
だからこそ、まずは相手の犬との距離を十分に取ることが大切になります。
ここでいう「十分な距離」とは、人間の感覚で十分に離れている距離ではありません。愛犬にとって、相手の犬を見てもすぐに吠えなくて済む距離のことです。
飼い主からすると、「こんなに離れているのに」と思う場合でも、犬からすると、その距離でも近すぎると感じることもあります。
特に、苦手な相手や、過去に嫌な経験をした犬に似ている相手、大きな犬などに対しては、人間が思っている以上に距離が必要になることもあります。
ただ、実際のお散歩では「そんなに距離を取るなんて無理」と感じる場面もあると思います。
道幅が狭い地域もありますし、犬の散歩が多い時間帯では、前からも後ろからも犬が来ることがあります。
その場合は、その場で何とかしようとするより、まず散歩時間や散歩コースの見直しから始めるとよいと思います。
犬と出会いやすい道を避ける、犬の散歩が多い時間帯をずらす、見通しの良い道を選ぶ、曲がり角や家の前で急に犬と出会いやすい場所を避ける。こうした調整によって、愛犬にとって必要な距離を取りやすくなります。
相手との距離を十分に取る。苦手な相手ほど大きく距離を取る。それが難しいなら、お散歩時間やお散歩コースも見直す。
そうした工夫をすることで、愛犬が他の犬を見たとき、吠えるまでに少し時間が生まれます。
その時間が生まれた分、飼い主は愛犬が吠える前に対応に入りやすくなるかもしれませんね。
前兆行動を見るのは簡単ではありません
ここまで、吠える前に見られやすい前兆行動についてお話ししてきました。
ただ、実際のお散歩の中でこれらの変化を見つけるのは、決して簡単ではありません。
前兆行動を捉えるには、愛犬の様子を観察する必要があります。
でも、他の犬の接近に早く気づくためには、周囲も見ていなければいけません。
愛犬を見る。周囲も見る。
これをお散歩中に同時に行うのは、慣れていないとなかなか難しいですよね。
そこで、まずは周囲を見ることを優先してもよいと思います。
そして、他の犬を見つけたら、そこで愛犬に視線を移し前兆行動を確認しましょう。
一方で、飼い主が他の犬の接近に気づいていない時に、愛犬の方が先に何かを察知して前兆行動を示すこともあります。
そうすると、その前兆行動によって、飼い主が他の犬の接近に気づくことができるかもしれませんよね。
愛犬の様子が急に変わり、前兆行動が見られたら、周囲をよく確認するという流れもよいと思います。
つまり、前兆行動を見るというのは、愛犬だけをじっと見続けることではありません。
周囲を見て、他の犬を見つけたら愛犬を見る。
愛犬の様子が急に変わったら、周囲を見る。
このようにイメージしてもらうといいと思います。
もちろん、慣れないうちはかなり難しいです。
気づいた時にはもう吠えていた、ということも当然あります。
だから、前兆行動に気づけなかったからといって、飼い主の観察力が足りないという話ではありません。
まずは散歩のあとに、「あの時、先に相手の方向を見ていたかもしれない」「吠える前にニオイ嗅ぎが止まっていたかもしれない」と振り返るところから進めてみましょう。
その積み重ねによって、少しずつ愛犬の変化に気づきやすくなっていきます。
最後に…
前兆行動を知る目的は、愛犬の変化を見つけて、その場で無理に止めることではありません。
「このままだと吠える流れに入りそうだ」と早めに気づき、距離を取る、道を変える、視界を切る。そういった対応につなげるための手がかりとして見ていくことが大切です。
もちろん、これが他犬への吠えを改善する方法のすべてではありません。
これは、これから本格的なトレーニングに入っていく前の土台作りに関わるものです。
愛犬がどの距離で反応しやすいのか。どのような相手に反応しやすいのか。吠える前にどのような変化を見せやすいのか。
そういった愛犬の変化を知っていくことで、今後トレーニングを進める時に愛犬にとって無理のない状況を考えやすくなります。
前兆行動を捉えることは、ゴールではなく入口だと考えてください。
まずは、「うちの子は吠える前にどんな変化が見られるか」を知るところから意識してみましょう。
その積み重ねが、吠えさせない散歩を組み立てるための大切な一歩になります。


