散歩中に他の犬に吠える|まずしてほしいこと、すぐにできること

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犬との暮らしの中で、飼い主さんが悩みやすい行動の一つに「吠える」という行動があります。

獣医学の学術誌『Journal of Veterinary Medical Science』に掲載された、日本の家庭犬2,050頭を対象にした調査でも、吠えるという行動は、飼い主さんが困りやすい行動の上位に挙げられています。

ただ、一口に吠えると言ってもその中身は様々なのですが、

その中でも散歩中に他の犬へ吠えるという悩みは、日常の散歩に関わるため飼い主さんにとって負担になりやすい問題の一つです。

前から犬が歩いてくる。その姿を見つけた瞬間、愛犬は相手の犬に向かって吠え始める。

飼い主さんは慌ててリードを短く持ち、声をかけたり、道の端に寄ったりして、なんとかその場をやり過ごす。

このような場面に心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回のこの記事では、主に「近づかないでほしい」「あっちへ行ってほしい」というような、相手を遠ざけることを目的にする吠え、一般的に警戒吠えと呼ばれる行動に絞って考えます。

この行動と向き合うために、

まずしてほしいこと

すぐにできること

これらをテーマにくわしく書いていきます。

他の犬を避ける散歩

他の犬に吠える愛犬を連れている飼い主さんは、すでに他の犬を避けながらお散歩をしていることが多いと思います。

前から犬が来たら道を変える。横道に入る。場合によっては立ち止まって相手が通り過ぎるのを待つ。

それ、正解です。

この問題に対してまずしてほしいことは、「他の犬を避ける」ということなんです。

ただ、ここでお伝えしたいのは、「今まで避けていなかった人は、これから避けましょう」というような単純な話ではありません。

おそらく多くの飼い主さんは、すでに何らかの形で他の犬を避けていると思います。

だから、今回考えたいのはすでに行っているその避ける動きの精度を上げるということです。

たぶんほとんどの人はすぐにでもトレーニングに入りたいと思っていらっしゃると思います。

でもちょっと待ってください。

まずは日常の散歩を見直すことから始めましょう。

これまで散歩中に他の犬に繰り返し激しく吠えてきた犬にとって、「相手と関わらないことで吠えずに済んだ」という経験がとても大切だからです。

なぜそこまで他の犬を避けることが大切なのか。

その理由を詳しく書いていきます。

理由1|警戒吠えを今以上に強化させずに済む

1つ目の理由は、警戒吠えを今以上に強めずに済むということです。

警戒吠えは「吠えた結果、相手の犬が遠ざかる」「吠えた結果、相手の犬が見えなくなる」という流れで強化されることが多いです。

ここで難しいのは、愛犬が吠えたあとでは、こちらがどのように対応しても、犬の目線で「追い払った」という形になりやすいということです。

吠えながらそのまますれ違えば、すれ違った相手の犬はそのまま遠ざかっていきます。

吠えたあとに横道へ避ければ、相手の犬は目の前からいなくなります。

吠えたあとに抱き上げれば、相手との距離が変わったり、視界からいなくなったりします。

このように愛犬の目線では「吠えたら相手がいなくなった」すなわち「追い払った」と受け取れてしまうことが多いわけですね。

このような、動物が行動した結果、嫌なものや不安なものがなくなると、その行動が繰り返されやすくなるという仕組みを、学習理論では「負の強化」と呼びます。

この警戒吠えは、吠えたら相手の犬がいなくなった、という負の強化によって悪化もしくは維持されていることが多い行動です。

この警戒吠えが悪化する状況をくわしく書いた記事もありますので、もしよければご覧ください。
https://kompis-dog.jp/barking-at-dogs-on-walk/

愛犬が吠えたとき、どうしても「追い払った」という形が成立しやすいということ。

でも逆に言えば、愛犬が吠えていなければ、「吠えて追い払った」という成功体験そのものを積ませずに済みます。

他の犬と出会わずに散歩を終えられた。あるいは、吠えずに相手と関わらずに済んだ。

このようなお散歩は、一見すると「何も練習していない散歩」に見えるかもしれません。

これは、他の犬に慣れる練習を直接進めているわけではありません。

これだけで警戒吠えがすべて解決する、という話でもありません。

それでも、「吠えたら相手を追い払えた」という経験を積ませずに済んだという意味では、十分に価値があります。

まずは悪化を防ぐ。

そのお散歩スタイルを確立してから、トレーニングについて考えていきます。

他犬を避ける散歩は、そのための最初の一歩です。

理由2|警戒心が弱まり、過敏さが減る

2つ目の理由は、警戒心が弱まり、過敏さが減るということです。

他の犬に激しく吠えるコを見ていると、実際に相手の犬を見つける前から、すでに緊張していることがあります。

散歩中にキョロキョロしていたり、些細な物音に顔をあげたり、遠くの動きにすぐ反応してじっと見つめる。

地面のニオイを嗅いだり飼い主の方を見たりするような散歩を楽しむ行動よりも、周囲を見張る時間が長くなっている状態ですね。

これは、これまで散歩中に他の犬と遭遇して激しく吠えることを繰り返してきたことによって、「また犬が来るかもしれない」と常に身構えている状態でしょう。

いわば、警戒心に勢いが乗りアンテナを常に張っているような状態です。

この警戒心に勢いが乗った状態の犬は、とても過敏に反応します。

遠くに犬が見えただけでもすぐに吠えたり、犬の姿がはっきり見えていなくても足音や気配だけに吠えたりします。

常にアンテナを張っているので、飼い主さんが相手犬に気づく前に犬のほうが先に見つけて吠えてしまうことも多いでしょう。

このように過敏に反応されると、対応するのもなかなか難しくなります。

だから、まずはこの勢いの乗った警戒心を和らげるということを考えていきましょう。

そのために必要なのが、「今日の散歩では他の犬と遭遇しなかった」「吠えずに帰ってこられた」という経験です。

他の犬と遭遇するたびに吠えていると、犬は次の散歩でも「また来るかもしれない」と身構えやすくなります。

反対に、他の犬と会わずに落ち着いて歩ける散歩が続くと、少しずつ散歩中の警戒が減っていきます。

もちろん一度や二度で大きく変わるわけではありません。

でもそういうお散歩を繰り返していくと、散歩中の愛犬の様子に小さな変化が見られるようになっていきます。

周りを見張る行動が減っていく分、地面のニオイを嗅ぐ時間が増えたり、飼い主の方を見られるようになったりします。

そういった変化は、犬が安心してきているサインと評価できるでしょう。

他犬を避ける散歩は、ただ他の犬から遠ざけるためのものではありません。

愛犬の中にある「また来るかもしれない」という警戒心を解いていくための散歩でもあります。

理由3|日常の散歩で吠えが維持されていると、練習しても変わらない

3つ目の理由。

私が最初に「他犬を避けるお散歩スタイル」を提案する一番大きな理由はここにあります。

それは、日常の散歩の中で警戒吠えを維持させていると、トレーニングを行ったとしても、その練習は効果が出にくいということです。

分かりやすく言うと、

日常の散歩の中で愛犬が吠えて「追い払う」という体験を繰り返していると、

他でトレーニングを行ったとしても、

日常の散歩の中での警戒吠えは変わらず吠え続けるという形になってしまいます。

犬の行動は、トレーニングの時間だけで作られるわけではありません。

毎日の散歩で何を経験しているかも大きく影響します。

しつけ教室に通ったり、犬の幼稚園に連れて行ったりすることも、一つの選択肢だとは思いますが、

毎日の散歩で警戒吠えを強める経験が続いているなら、教室や幼稚園だけでこの問題を解決しようとするのは難しくなります。

だからこそ、まずは日常のお散歩の中でこの警戒吠えと向き合うことが大切になるのですね。

避けていたら、もっと犬が苦手になるのでは?

ここで、「他の犬を避けていたら、もっと犬が苦手になるのでは?」と不安に思う方もいらっしゃると思います。

実際、子犬の頃に他の犬との関わりが乏しかったから、今警戒している可能性があるわけです。

これ以上他の犬との関わりを減らすと、もっと苦手になるのではないかと。

ここできちんと理解してもらいたいことは、

今の段階で他の犬との関わりをいったん減らすことが、それ自体が他犬をさらに苦手にするわけではありません。

安心してください。

むしろ激しく吠える形で他の犬と関わらせることで、警戒心が高まり吠えも強まっていきます。

急がなくても大丈夫です。

まず優先したいのは、他の犬に会わせることではなく、吠えずに終えられる散歩を増やすこと。

これは、これからより積極的にこの問題と向き合っていくための土台作りです。

土台が不安定なまま、その上に練習を積み上げようとしてもうまく積み上がりません。

吠えさせたくないからなんとなく他の犬を避けている飼い主さん。

「慣れさせるためには逃げてはいけないのでは」と悩みながら避けている飼い主さん。

大丈夫です。

計画的に、前向きに、積極的に他の犬を避けていきましょう。

では、どうやって他の犬を避ける散歩を作るのか

ここまで、他犬を避ける散歩の意味について話をしてきました。

では、実際には何を見直せばよいのでしょうか。

まず考えたいのは、日常の散歩そのものの組み立てです。

他の犬に会いやすい時間に歩いていないか。逃げ場のない道を選んでいないか。愛犬より先に相手犬を見つけられているか。相手犬を見つけた時に、落ち着いて避ける動きができるか。

こうしたところを一つずつ整えていきます。

お散歩時間を見直す

まず見直したいのは、散歩の時間です。

朝や夕方など、多くの犬がお散歩に出る時間帯は、他の犬と遭遇しやすくなります。いわゆるお散歩のゴールデンタイムですね。

生活の都合もあるので完全に避けるのは難しいと思いますが、できるかぎり時間をずらしましょう。

場合によっては、夜の暗くなってから散歩に行くのも一つの方法です。

他の犬が少ない時間帯であれば遭遇そのものを減らせますし、周りが暗く遠くまで見えにくくなるため、愛犬が遠くの犬を見つけて反応する機会も減らせます。

ただ、夜の散歩では安全面に注意してくださいね。

車や自転車から見えやすいようにライトを使う、防犯のことも考えて人通りの少なすぎる道は避ける、足元が見えにくい場所は歩かないなど、飼い主さんと愛犬の安全を優先しましょう。

お散歩コースを見直す

次に見直したいのは、お散歩コースです。

他の犬に会いやすい道は避け、できるだけ犬が少ないコースを選びたいところです。

それに加えて、横道が多いコースがいいですね。

前方に犬を見つけた時に、早めに曲がることができます。

逃げ場のない一本道を歩く場合は、あまりとどまらずにできるだけ早めに抜けるようにしましょう。

見晴らしの良い道もおすすめです。

河川敷や田んぼ道、広い歩道のある道などは、遠くから相手犬を見つけやすくなります。

1回あたりの散歩時間を見直す

散歩時間の長さも見直してみてください。

屋外にいる時間が長ければ長いほど、他の犬と遭遇する機会は増えます。

もちろん、運動や気分転換は大切です。犬によって必要な運動量も違います。

ただ、他犬に吠える経験を減らしたい時期には、長く歩くことが必ずしも良いとは限りません。

1回のお散歩が長いためその中で何度も他の犬に遭遇して吠えてしまうなら、短めに切り上げる方がよい場合があります。

15分〜20分くらいの短い散歩でも構いません。

そして一回のお散歩時間が短い分、家の中で発散できる遊びやアクティビティを考えてあげたいですね。

愛犬よりも先に相手犬を見つける

他犬を避ける散歩では、飼い主さんが愛犬よりも先に相手犬を見つけることが大切になります。

もちろん、毎回完璧に先に見つけられるとは限りませんが、

それでも、飼い主さんが周りに意識を向ける癖をつけられると、避けられる場面は増えていきます。

歩きながら遠くを見る癖をつける。

曲がり角では愛犬を少し止めて、飼い主さんが先にのぞき込む。

道路にカーブミラーがあるならそのミラーで確認する。

こうした小さな確認が吠える前の対応につながります。

愛犬を見る。周囲も見る。少し先の道も見る。

最初は忙しく感じると思いますが、繰り返していくうちに少しずつ慣れていきますよ。

避ける動きそのものを練習する

相手犬を見つけた時にすぐに避ける行動に入るためには、避ける動きそのものにも練習が必要です。

可能であれば、普段からオイデの練習をしておくとよいでしょう。

「おいで!」と呼んで、少し小走りで愛犬から離れる動きを見せると、愛犬は駆け寄ってきてくれることがあります。愛犬が駆け寄ってきてくれた瞬間、褒めましょう。ご褒美をあげましょう。

これがオイデの練習となり、いざという時に役に立つと思います。

ただ、実際の散歩では、毎回オイデで動けるとは限りません。

その場合は、リードを短く持ち、優しく、でもしっかりと引っ張って愛犬を誘導します。

ここで注意したいのは、リードを長く持ったまま強く引っ張らないことです。リードが長いまま急に引くと、どうしても乱暴な引っ張りになりやすく、犬も驚いたり焦ったりしてしまいます。

リードを短く持ってゆっくりと丁寧に引っ張るようにしましょう。

イメージとして、子どもの手を引いて危ない場所から移動するような感じに考えてください。

もちろん愛犬を引きずるような状況では無理をしてはいけません。他の手を考えます。

もしもリードを引っ張ってその場から移動できたら、移動した先でぜひごほうびをあげましょう。

これは、愛犬が飼い主について来たことへのごほうびです。

ここでご褒美をあげることで、今後よりスムーズについてきてくれるようになるでしょう。

すっぽ抜けには十分注意すること

リードを引っ張って移動する時には、首輪やハーネスのすっぽ抜けには十分に注意してください。

リードを引っ張ると、犬は反発するように引っ張り返す動きを取ることがあります。

それによっては、首輪やハーネスがすっぽ抜けやすくなることもあります。

特に、愛犬と向き合う形でリードを引っ張る動きになったら要注意です。

それ以上リードを引っ張るのをやめて、他の方法を考えます。

こういったことを踏まえて、すっぽ抜け防止用のリードがあると安心ですね。

1本のリードの先が2本に枝分かれしているリードです。1本を首輪に、もう1本をハーネスに付けておけば万が一のすっぽ抜けも防げる確率が高まります。

近所ほど警戒心が高まるということ

最後に、知っておきたいこととして、

家の近所ほど、愛犬の警戒心が高まり吠えやすいということです。

家の近所はこれまで何度も他の犬と出会い、吠え、その相手を追い払ったという経験を重ねてきた場所です。

そういった経験が積み重なることで、その場所そのものが「また犬が出てくるかもしれない」という手がかりになっています。

だからこそ、近所の散歩ほど慎重に考えてください。

いつもの道だから大丈夫、ではなく、いつもの道だからこそ身構えやすいかもしれない。

そう見立てて、時間やコース、歩き方を慎重に整えていきましょう。

まずは日常のお散歩を整えるところから

今回は、「他の犬を避けるお散歩」についてお話をしてきました。

もちろん他の犬を避けることが、最終的な目標ではありません。

繰り返しになりますが、これは土台作りです。

これから先のトレーニングをスムーズに進めていくための土台です。

土台が不安定なままその上に練習を積み上げようとしてもうまく積み上がりません。

すぐにトレーニングに入りたい気持ちはよく分かるのですが、

あまり焦らないように。

犬の歩みは人間が思うよりもゆっくりです。

飼い主さんだけが張り切ってがんばっても、犬がそのペースについてこられないことがあります。

特に、警戒心を伴う行動は、練習をすればするほど良くなっていく、という事ではありません。

それぞれの犬にはキャパシティがあります。それぞれのペースがあります。

そういったことも踏まえて、丁寧に着実に進めていきましょう。

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